杉井酒造

銘柄酒/「杉錦」
自然の力を活かした生酛と山廃で
ほんとうに旨い酒を探求する
日本酒評価のひとつの典型として、低酸で綺麗な辛口のお酒という表現があります。聞きなれた表現で言うと、スッキリ飲みやすい淡麗辛口ということになるでしょうか。いろいろな考えや、お好みもおありと思いますが、かつて「端麗辛口」=「うまい酒」という評価基準があったことに、異論を唱える方は少ないと思います。ただ、酒は嗜好品です。淡麗辛口というメインストリームの酒質を選ぶ人もいれば、その味わいに飽き足らず、そこから少し離れた、濃醇で個性的な酒質にこそ、旨さや面白みを求める人も少なからずいらっしゃいます。そうした文脈から言うと、杉井酒造の『杉錦』は間違いなく個性的であり、自分たちの信じるところに従って進む、独立独歩の酒蔵と言えるかもしれません。ただ、こうした取り組みが可能になるのも、酒造りの高い技術や理論、豊かな経験値を持っているからにほかなりません。そして何より、メーカーとして『造りたい酒』の方向性や価値を、蔵元と蔵人たちが共有している、同じ方向を向いて酒造りに取り組んでいることになります。
蔵元杜氏自ら率いる技術者集団
常に挑戦する積極性あふれる蔵
杉井酒造6代目蔵元であり、自ら杜氏も務める杉井均乃介社長の造るお酒は、とてもユニークです。それは、速醸酛(そくじょうもと)や高精白の酒米の使用が主流である現代の酒造りにおいて、8割以上が生酛(きもと)や山廃仕込みによる酒造りであることからも覗えます。現代の酒母造りは、予め酒母用の乳酸を添加する『速醸酛』という方法が主流です。乳酸は殺菌力が強いため、お酒に不要な雑菌の繁殖を防ぎながら、安定した酒母の育成を可能にしてくれます。対して生酛や山廃は、野生の乳酸菌が酒母の中で繁殖するのを待ちながら、じっくり時間をかけての育成となります。速醸酛よりも大変手間が掛かりますし、その育成期間も1.5倍~2倍、1カ月という時間を要します。しかし、でき上がった酒は味に幅や複雑性があり、搾ってからの熟成で、よりおいしくなると言います。また低精白の酒米を使用したお酒を、常にラインナップしているのも非常に特徴的です。そのことをお聞きすると、『今では忘れられてしまった、昔のお酒の深い味わいを再現してみたいと考えています』と教えてくれました。こうしたお考えの答えの一つが、平安から室町時代に考案されたという『菩提酛』による酒造りなのでしょう。菩提酛に加え、ほとんどの酒を生酛や山廃といった、江戸期や明治期に開発された醸造方法で造り、上槽(搾り)も手間や時間のかかる槽(ふね)で丁寧に作業しています。杉井酒造の個性的な酒は、唯一無二の魅力にあふれています。また、本格的な乙類焼酎や本味醂も製造しています。ぜひ杉井酒造の個性的なラインナップをお楽しみいただければと思います。

主要銘柄

品名:杉錦 大吟醸
米(精米歩合):山田錦(40%)
酵母:NEW-5、HD-1
日本酒度:+6
酸度:1.1
会社概要
社 名:杉井酒造
住 所:藤枝市小石川町4-6-4
連絡先:TEL. 054-641-0606 FAX. 054-644-2447
代表者:杉 井 均乃介
杜 氏:杉 井 均乃介(自社)
創 業:天保13年(1842年)
最寄駅:JR藤枝駅から車で約4分。徒歩約15分。
見 学:要事前連絡
http://suginishiki.com/