静岡県育成酒米新品種「誉富士」(3)
▲写真左から「山田錦」「誉富士」「若水」。誉富士は、山田錦の良い点を受け継ぎながら、短稈種化した品種と考えると分かりやすい。
──よく年は、またひとまわり広い地域で作付けされたのですね。
18年度は、県下11市町(御殿場市、富士宮市、芝川町、焼津市、大井川町、岡部町、菊川市、掛川市、袋井市、磐田市、浜松市)32名の農家、合計12.5haに試験栽培を拡大しました。生産したものは、前年度と同じ酒蔵に加え、新たに8社(富士錦酒造、萩錦酒造、杉井酒造、森本酒造、土井酒造、千寿酒造、花の舞酒造、浜松酒造)を加えた合計15社によって試験醸造を行いました。市販された清酒も前年度に引き続き消費者に好評で、2社の銘柄は、第56回名古屋国税局酒類鑑評会において優等賞を受賞しています(純米酒の部、本醸造の部)。
──早速、名古屋で受賞というのは、嬉しいですね。
19年度は、試作地を伊豆の国市や沼津市にも広げ、合計15.7ha(農家30名)で栽培されました。試験醸造も富士正酒造1社が新たに加わり、16社で試験醸造される見込みです。
──またどんな結果になるのか楽しみですね。米・水・酵母・・・と揃えば、完全なる静岡ブランドのお酒ということになります。この米粒のひとつひとつに宇宙があって、限りない可能性が潜んでるのですね。
▲平成17年、7社(万大酒造・高嶋酒造・富士高砂酒造・神沢川酒造・三和酒造・初亀醸造・大村屋酒造)が、初の大規模試験醸造を実施。開発者(県)、米生産者、JA(経済連)、静岡県酒造組合、各酒造会社等が連携し、異例ともいえる短期間での新製品開発を実現させた。
そうですね。ここまでこれたのも、農家の方々、酒造会社、酒販店の方たちがとてもよく盛り上げてくださいました。本当にありがたく思っています。細かい米をひとつひとつ取り出す作業、計測作業は根気のいる作業の連続です。でも、機械ではできません。だから、我々がひとつひとつ見守りながら、確認しながらやっていきます。地道な作業ですが、実れば大きい、喜びも大きいのです。
──よく分かります。
本日は、ありがとうございました。
誉富士の特性
- 出穂、成熟期は「山田錦」と同等の晩成熟期です。
- 稈長が「山田錦」より24cm短く、穂長もわずかに短い、穂数はほぼ同じです。
- 下位節間が短く、稈質がやや硬いため極めて倒伏しにくい品種です。
- 止葉は「山田錦」と同様になびき、穂は穂軸が柔らかくなびきやすい傾向です。
- 玄米の品質・粒大は「山田錦」と同等で、収量性は「山田錦」より高いと推測されます。
- 「山田錦」と同様に、いもち病に弱く、穂発芽しやすいが、脱粒性は、やや難に変化しています。
- たんぱく含有量は「山田錦」並みで低く、優れます。
- 心白の発現は「山田錦」よりも多く、玄米断面における心白の形状は線状です。
- 精米特性は、ほぼ「山田錦」並みで、高度精白にも耐えられます。