▲「葵天下」を手にする山中社長。
住所/掛川市横須賀61
銘柄酒/「葵天下」
≫所在地
城下町・掛川市横須賀には、昔そのままの風情ある家屋が並ぶ地域がある。江戸時代の風情の中、ひっそりと建つ「遠州山中酒造」は、古き良き時代の日本家屋の面影を残している。奥の蔵は青い空に立ち向かうようにでんと構え、その壁の白さが眩しい。
ここに、かつての近江商人の流れをくんだ蔵元杜氏がいる。平成11年から自ら醸した酒は、全国新酒鑑評会において平成13年から連続7回の入賞を果たしている。山中隆社長に話を聞いた。
いい酒、未だ分からず・・・自分が満足できる酒を造りたい。
▲上:瓦屋根に格子戸、杉玉。老舗酒蔵らしい風情。下:レトロな雰囲気が漂う事務所。暖簾の奥が蔵へと続いている。
──山中酒造さんの歴史はかなり古いとお聞きしているのですが。
今でもよく耳にすると思うのですが、「近江商人」という言葉がありますよね。滋賀県から天秤棒ひとつ担いで大阪、京都、関東にまで行商して歩いていた人たちのことです。
──社長のご先祖は、近江商人だったのですね?
はい、そうです。私の祖先が酒造りを始めたのは天保年間に入ってからで、今の富士宮を基点にしていました。もともとは武士だったみたいですがね。それから富士に4蔵、ここ掛川に1蔵と広げていったのです。
当時はこの辺り一帯にも多くの酒蔵があったのですが、酒は当時腐りやすい木桶に保管されていたため、酒が全部ダメになってしまうような事故が多かったようです。そんなわけで蔵も少しずつ減っていき、生き残ったのがここです。