▲夏の空に蔵の瓦が映える。この時期、休眠していた蔵の整備に毎日取り組んでいる。
住所/掛川市沢田64
銘柄酒/「曽我鶴」「萩の蔵」「酒楽々」
≫所在地
青々とした夏空に黒い瓦屋根の照り返しが眩しい。休眠して7年の歳月は静かにこの蔵の上に流れていた。夏の暑いシーズンを利用して、少しずつコツコツと修繕しながらの酒造りは休む暇もない。
一部上場企業の管理職の道を捨て、休眠していた蔵を建て直すことに新たな人生を賭けた人。もの静かで優しい笑顔を見せる萩原吉宗CEOのどこに、こんなチャレンジ精神と思い切りの良さが潜んでいたのだろう。その語り口の中には、酒造りへの熱い情熱とロマンが溢れていた。
たくさん飲んでも飽きのこない、爽やかで味わいのある酒を造りたい。
▲「萩の蔵」を手に。萩原吉宗CEO。
──こちらでお酒を造り始めて何年くらいになりますか?
初めて造ったのは、平成16年10月の仕込みからですね。ご存知かと思いますが、ここは7年休眠していた蔵なんですよ。それをいろんな方の協力やご縁で復活させることができました。もともとは曽我鶴という蔵だったんです。
──曽我鶴時代からの歴史が積み重なっての重厚さが、蔵全体から感じられます。CEOの前職は半導体の研究・開発をされていたと伺っているのですが?
そうです。出身は静岡なんですが、東京の企業でマイコンの創生期の頃から、研究・開発に携わっていました。
──今までの世界とはまったく違う世界に入られたと思うのですが、どうして酒造り・・・だったのですか?
53歳になった時、開発現場から企画部門へ移ったのですが、その時、先端技術分野では十分楽しんで満足できる仕事ができたので、転職するにあたっては、前と同じ仕事はしたくないと考えました。もともと前職の教えが「誰もやらないことをやれ、新しいことにチャレンジしろ」と常に言われ続けてきたというのもありますね(笑)。