優しい酒を造りたい。
舌触りが滑らかで、香りがすーっと抜けていくような・・・
▲少しずつ造りを増やして行きたいと語る、君杯の次代を担う英俊さん。
──息子さんとふたりで・・・というお話ですが、杜氏は使われないのですか?
そうですね。平成8年にこれまで来てくれていた南部杜氏が辞めましてね・・・。この杜氏が恐いというか、厳しいというか・・・とにかく気難しい人だったんですよ(笑)。
平成9年からは息子とふたりで酒造りをしています。前の杜氏があんまり厳しかったものですからね、一通り酒造りは何とかふたりでもできるようになっていたのですよ。毎年、高橋先生からいただいた資料を読み返して、初心に戻ってから取り掛かるんですがね。
──そうだったんですね。最初はかなりご苦労なされたのではないですか?
息子が22〜23歳の時から酒造りをやるようになりまして、ふたりで勉強しながら、試行錯誤を重ね造ってきました。
私たちが蔵元醸造を始めた時、うちと他に國香さんと根上さんくらいしかなかったですね。2年目で3等をもらい、何とかやってきました。今でもビクビクなんですけどね。
たったふたりということで、造り方の手順も変えてみたりもしてきました。仕込み時期の半年のうち正月休みが3〜4日、家内まで手伝いにくるという生活ですから。
──いつもおふたりで初心を忘れず取り組まれているのですね。
こちらの酒は主にどこで消費されているのですか?最近の動向はいかがですか?
ここでも小売をしているんですよ。ここは旧東海道に面していますから、街道ウォーキングの人たちが、よく寄ってくれるのです。そしてリピーターになってくれるケースが多いですね。地元で買いにきてくれる年配のお客さんは、本醸造以上を飲む人が多く、若い人たちには吟醸が好まれているようです。
消費の動きとしては、下降気味だったのが、ここ数年は少し安定してきたような気がします。日本酒はやっぱりリピーターになってもらえると強いですからね。でも、20代の方はあまり酒を飲まなくなりました。飲みに行くお金がもったいないらしいですよ(笑)。これは世界的傾向みたいです。フランスでさえもワインの消費が落ちているらしいですから。