常に挑戦の姿勢を忘れず、他にはない磯自慢らしさを追及したい。
──米だけでなく、良い酒を造るために、あらゆるものにこだわっていると思うのですが、静岡酵母についてはどうでしょう。
▲県内ここだけの、急速加熱・急速冷却が可能な火入れ装置。酒を劣化させずにフレッシュさを保つ。
静岡酵母が開発された頃のことですが、夜中の3時頃、蔵に電灯が点いているので行ってみると、河村さん*がいつの間にか来ている。それで私を見て、「洋ちゃん、遅いぞ!」って(笑)。遅いといっても3時ですからね。外は真っ暗ですよ。
その頃、河村さんがよく言っていたのは、「微生物にホリデーなし」。本当にいつ寝ているのかと思うくらい休みなしで、静岡の酒造会社にとって間違いなく恩人です。
(*)河村伝兵衛氏:元・静岡県沼津工業技術支援センター研究技監。静岡酵母の研究開発と、その醸造指導に尽力し、静岡県産酒の品質向上に多大な功績があった。平成15年に退職。現・株式会社RIVERSON代表取締役。
──河村先生の功績はよくお聞きしますが、タフな方ですね。
静岡酵母といえば、今年(H19年)の全国新酒鑑評会で、静岡酵母を使った吟醸酒で金賞を受賞されました。静岡型吟醸にとって、久々の快挙だとおっしゃる蔵元さんもいらっしゃいましたが。
そうですか。ありがたいですね。確かに今は香りの強いカプロン酸系の酒が有利で、酢酸イソアミル優勢のHD-1(大吟醸用の静岡酵母)で造った酒は、不利といわれてはいます。個性が出しにくいというより、ものすごく香りの強い酒の後に利いても、「分からない」というのが実情だと思います。
ただ、あまり香りが強すぎると、料理の味を邪魔したり、呑み飽きしてしまう。食中酒としては、静岡酵母の酒が優れていると思います。
▲社長の隠れ家ともいうべき酵母の培養室。「ここにいる時が一番落ち着きます。」と笑う。
──私などから見ると、酒造りのためにできることは、全てやり尽されているように思えるのですが、いかがですか。
まだまだです。気がつく点、改善したい点はいろいろあります。そのための設備投資など、毎年必要になりますが、そこは終わりがないかなと思っています。
酒のためといえば、今年(H19年7月)設立された、「和醸和楽」という集まりに参加しています。日本酒文化の啓蒙や、今まで日本酒を飲んだことのない層の掘り起こしなどが目的ですが、最終的には「SAKEアカデミー」の設立を目的とした団体です。こうした活動を通して、日本酒の発展にも寄与できればと思っています。
──本日はありがとうございました。
(取材日:2007年9月13日)