▲爽やかな笑顔の望月裕祐社長。「英君」を手に。
住所/静岡市清水区由比入山2152
銘柄酒/「英君」
≫所在地
夏の暑い盛り、旧国道1号線を折れ、由比川沿いの県道を車で5分ほど登り英君酒造を訪れた。道沿いの長い白壁と重厚な母屋が、その歴史を感じさせる。蔵のすぐ脇の入山親水公園の清冽な流れと、緑の山々との鮮やかなコントラストが、蔵の佇まいと共に印象に残っている。
この山間の地に蔵を構えて130年。日英修好通商条約が結ばれた年が創業だったこと、また徳川の英でた君主にちなんで「英君」という屋号が生まれたという。蔵元の望月裕祐社長にお話を聞いた。
どんな食事にも自然と馴染む、そんな食中酒でありたい。
▲新しい精米機が納まる精米室。
──不思議に思ったのですが、なぜ田んぼのない山間の地に蔵を建てられたのでしょう?
うちは明治14年の創業で、私で5代目になるわけですが、初代が3kmほど離れた山の中に“桜野沢”という良水が湧出しているのを発見しました。2代目がどうしてもこの水を使って酒造りをしたいと考えたようで、山の持ち主と交渉してその山ごと買い取ったということです。
──なるほど。「輸送の便」よりも「水の質」を取ったと。
そうだと思います。今となっては分かりませんが。
もちろん今もそこから仕込み水を引き込んでいますが、軟水でいい意味での個性があります。ただ、ほんの少し鉄分があるので、自分で作った噴霧装置とフィルターで完全に鉄分を除去して使っています。この水で福井の五百万石、兵庫の山田錦などを原料米として仕込んでいます。