肴がなくてもスイスイ飲める、そんな酒がいいなあ。
▲設備のひとつひとつに社長の工夫が。写真は酒袋を搾る酒槽(さかぶね)。
──いやー、それは本当に大変でした。行政も最初からそのくらい配慮すべきですよ。
まあ、結局そこは折れてくれて、元の井戸がそのまま使えて良かったんだけどね。だけど、建て直すたって大変だよ。設備の移設を考えなきゃならないし、特に酒槽(さかぶね)の移動が大変でね。
──酒槽は高さもありますし、重そうですから大変でしたでしょうね。
そうなんだよ。それに圧を掛けて酒を搾るわけだから、しっかり固定しなきゃならない。メーカーに頼んで改造してもらったり、そのせいで建物の設計も何回かやり直したりで、余分なお金が掛かっちゃった。
それに、いらない物も処分しなきゃならない。これが苦労した。なんせ100年分だからね(笑)。昔の道具で貴重そう、珍しそうなものはもったいないので、ここ(事務所)に展示することにしたんだよ。
──ええ、さっきから気になっていたのです(笑)。これ雰囲気がありますよ。ぜひ、次回の取材で紹介させてください。
さて、この新しい建物での酒造りは今年で2回目となるわけですが、社長自らが杜氏をなさっている。
そうです。昔は能登や南部、志太杜氏を使っていた時期もあります。いろいろ使っていたのですが、能登杜氏が引退してからは、私が杜氏をやっています。もう5〜6年になりますかね。仕込み時期には地元の人に手伝いに来てもらっていますが、ほとんどひとりでやってるね。
──御殿場の根上さんもそうだとお聞きしていますが、ひとりで仕込みをされるっていうのは、かなりキツイのではないですか?
そりゃあ大変だよー。まあ、毎年1回は倒れちゃう(笑)。
▲タンクの並ぶ貯蔵倉。これだけの酒造りをひとりでこなす。
──そうですかー。身体を大切にしてください。
では、社長が酒造りで心掛けていることは?
まず洗米です。洗米から始まって、米をどううまく処理できるかで旨さが変わると思います。
「杜氏は毎年1年生」という言葉がありますが、私は幼稚園児くらいの気持ちで毎年取り組んでいます。酒は毎年出来が違うから面白いよ。あっ、これは生酒で飲んだ方が絶対旨そうだとか言いながら、新しい商品ラベルを作ったりしてね。ひとりだから臨機応変にやっています。