山廃、生で日本酒の美味しさを探究したい。
▲麹室。壁に立て掛けられているのは吟醸造り用の麹蓋。
──今はどのくらい造ってらっしゃるのですか?
販売量として、焼酎も入れて約400石、40,000本ですね。
この人数ですから、無理のない製造計画を立てることが大切だと思ってます。無理して体調を崩したりすると、酒にも影響がありますからね。健康を害するような無理な作業環境では、いい酒を造り続けることはできません。
──杜氏になられた最初の年は、どんな感じでした?
1年目の出来というのは、辛口すぎでしたね(笑)。杜氏が変わったことで、やはり酒が変わったと言われました。でもその1年のいろいろな体験があったから、自分流のものがやれるという自信にもなりました。
──3年目の造りで、広島の全国新酒鑑評会で金賞をとられたのですね。
そうです。それから3年連続でいただきました。金賞をとったことでお客様の信用を得たという面もあると思います。そして、杜氏としての腕を認めていただけたと思います。
▲上:洗米、米を蒸す作業までの機械一式。下:タンクに掛けられているのは温度管理用のサーモメーター。
──さて、基本的なことを少し伺っていきたいのですが、水と米はどこのものを使っているのですか?
水は蔵内の井戸から引いてます。深さは・・・30mくらいですかね。大井川水系の水ということになりますが、発酵力の強い水だと思います。
酒米は兵庫県の山田錦と滋賀県の玉栄、それに地元静岡県の山田錦と誉富士です。その他、一般米として県産の米を使います。精米は委託に出し、洗米からうちの酒造りが始まります。
──今、山廃と生造りに力を入れてらっしゃるとお聞きしたのですが?
酒造りの中で、これまでは「いい酒を造ることはいい吟醸を造ること」とされていたと思います。皆で綺麗で香りの高い吟醸にとびついたんですね。でも、吟醸造りが酒造りの全てではないはずだ、うちらしい切り口を考えようと。そうして造り始めたのが山廃と生造りだったんです。あと、同じ理由で芋焼酎と味醂も造り始めました。
吟醸酒は、日本酒文化の華で、今後とも大事にしていきたいと思いますが、精白歩合の高くない素朴で酸味のある山廃純米に、日本酒のもうひとつの良さがあるのではないかと思います。