初亀の酒造りへの想いが、お客様にすぐ通じるような酒を。


▲上:醪(もろみ)をつめた酒袋を搾る、伝統的な酒槽(さかぶね)が3台も並ぶ上槽場。下:初亀のこだわりは、当然火入れ・瓶詰め工程にも及ぶ。酒を劣化させない工夫が随所になされている。
──今回は静岡酵母についてもお話を伺っていますが、造りに神経を使うそうですね。
そうです。確かに麹作りにかなり神経を使いますし、発酵中にも非常に細かい温度調節が必要です。そういった意味では、手が掛かります。
ただ、静岡酵母だから手が掛かるというわけではありませんし、酵母だけでいい酒ができるわけでもないのですね。よい材料は大切ですが、それだけではいい酒は絶対にできません。うちは静岡酵母だけじゃなく、協会酵母も使っています。
全国的に酒のレベルが上がっているわけですから、蔵元ごとにいろいろな造りがあって当たり前なんですよね。我々としては、そうした取り組みや、「酒は造るのではなく、生まれるまで育てるものだ。」という想いが、お客様にすぐ分かっていただけるような酒として、「初亀」を確立していきたいと思っています。
──材料のお話が出ましたが、こちらの水とお米は。
水は井戸を50m掘って汲み上げています。南アルプスの伏流水です。
米は兵庫県東条町の山田錦。特A産地です。それと、富山県南砺農協の五百万石にこだわっています。地元産では協力していただいている農家と連携して、雄山錦と県品種の誉富士ですね。
──岡部町の広報誌で、岡部酒米研究会と連携されているという記事を読みましたが。
そうです。地元岡部町や焼津市の農家だけでなく、東条町の農家と酒造会社が連携した「フロンティア東条21」という活動にも参加しています。
我々酒造会社にとって、良い米をいかに安定的に確保するかは、本当に切実な問題なのです。ですから農家の皆さんと共生していくという取り組みが、今後ますます重要になってくると思います。

▲店内にディスプレイされた「極吟醸 瓢月」のクラシックボトル。2006年グッドデザイン賞を受賞。
──最後に、もうすぐ静岡空港が開港しますが、海外市場などへの取り組みはいかがですか。
いろいろ考えていますが、アメリカ、ヨーロッパの市場に進出していきたいですね。
今年(H19年)4月に、ミラノで開催された「ミラノサローネ」に出展した、「TOKYO Bar」に蔵元として参加しました。ミラノサローネは国際的なデザインの祭典なのですが、日本酒の評判はとてもよかったですよ。この「極吟醸瓢月クラシックボトル(2006年度グッドデザイン賞受賞)」を持っていったのですが、このデザインも好評でした。
今、健康食として日本食が海外でブームじゃないですか。それと同じ意味で、健康飲料として、そして日本的な文化として、日本酒を海外の方にも楽しんでもらえたらと思いますね。
──ありがとうございました。
(取材日:2007年10月5日)